2016年6月2日木曜日

【書評】東野圭吾『人魚の眠る家』(幻冬舎)

ミステリーではなくても読ませる東野小説。テーマは脳死と移植


 テーマは脳死と移植。重い話題だ。脳死状態になった少女と、その母親を中心とする家族の物語。そこに東野氏得意の、架空の科学技術がアクセントを付け加える。
 脳死は人の死か、そうではないのか。日本で移植医療が進まないのはなぜなのか。日本人が大金を積んで海外で移植医療を受けるのは許されてよいことなのか。現在の移植医療、特に日本における移植医療の問題点を、巧みに小説化した作品だ。

 脳死を人の死と認めて移植医療をもっと推進すべきなのか、それとも「この子はまだ死んでません」という家族の声を優先すべきなのか。個人的には、脳死は人の死だと線を引くべきだと思うが、もし逆の立場になってしまったら、どう思うかは自信がない。正しい答えはないのだろうが「私には判断できません」で済ませてよい問題でもない。
 医療の進歩に伴い、この手の問題はさらに表面化していくだろう。そのとき、自分の意見は持っていたいものだ。




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