2015年12月1日火曜日

【映画評】時をかける少女(アニメ映画版)

人生をリセットしたくなることもあるけれど


 筒井康隆氏の原作も読んでいなければ、1983年の原田知世主演の映画も見ていない。全くの初見だった。
「30年前の小説や映画のリメイクでしょ」
という心配は無用。よいものは、時を経ても色あせない。これは、本作のテーマの一つでもある。

 女子高生、紺野真琴が主人公。時間をさかのぼる能力を得た真琴は、その能力を使って、日々の生活を都合のよいように改変する。
「でもその陰には、それによって苦しんでいる人がいるのかもね…」
という叔母の言葉が気になりつつも、日々の生活を謳歌する真琴。しかし、突然訪れる終焉。「時をかける」力を、いつ、どう使うのか。手に汗握る、でも切ないクライマックス。甘酸っぱい感覚が蘇る。

「ああ、いまのはナシ」
など、リセットしたくなる出来事は日常茶飯事である。実際にリセットできればパラダイスだろう。もちろん私もそういう思いに駆られることはある。しかし、それは本当によいことなのだろうか。リセットしたくなるような、赤面の出来事、痛恨の出来事を含めた経験全体がいまの自分を形成しているのだ。そういう経験も含めた、自分全体を認めることが大事なのだろう。なかなか深い物語だ。

 原作はラノベという言葉はなかった時代の小説だが、まさにラノベのノリである。赤川次郎氏やトレンディドラマが流行していた当時を思い起こさせる。ラノベの原点がここにある。
 その当時、中学校の授業中に赤川次郎氏の三毛猫ホームズを熟読していて、公民の先生に本を取り上げられたことを思い出した。あの本はどこに行ってしまったのだろう。時をかけられれば、取り返しに行くのもよいかもしれない。




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