2015年8月31日月曜日

【書評】東野圭吾『虚像の道化師』(文春文庫)

さすがの東野氏も、ついにネタ切れ?…


 ガリレオ湯川の短編集。このところ、福山雅治とのコラボ(?)もあって湯川学のキャラが際だってきているガリレオシリーズ。湯川が主役の長編にはちょっと食傷気味な感じがしなくもない。そんなときに出版された、久々の短編集。原点回帰し、科学を用いたあっと驚くトリックを期待していた。

 全部で7話が収録されている。最初の「幻惑す」がタイトルの「虚像の道化師」にまつわる話だ。しかし、話としてはよくできているのだが、そのトリックにはちょっと疑問…。架空の発明をトリックに使うのは、ちょっと反則のような。
 そして第2話、第3話も同様に、ストーリーはいいのだが、肝心の科学トリックにやや難があるように感じた。
「これは、さすがの東野氏もついにネタ切れか? 今後のガリレオシリーズは、湯川のキャラに頼った話ばかりになっていくのかなあ」
と、少し寂しい気持ちで後半へ。
 ところがどっこい、いい意味で期待は裏切られた。ネタは尽きていなかったのだ。後半戦は、科学トリックにも納得。短編でしか味わえない魅力を堪能した。ガリレオシリーズの原点はやはり短編だということを再確認した。

 ただし少し残念だったのは「科学」がトリックの鍵を握る展開や、あっと驚くどんでん返しが減っていることか。シリーズ誕生当初は、謎が「科学的に」解けるストーリーがもっと多かったように思う。
 今後も福山雅治、ではなく湯川学のキャラに頼らないストーリーを期待したい。




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