2015年4月9日木曜日

【書評】佐藤健太郎『ふしぎな国道』(講談社現代新書)

国道とマニアが、これほど相性がよいとは


 本書に出会うまで、国道マニアという存在すら知らなかったのだが、なるほど奥が深い。そして面白い。国道がオタク心をそそるのも、おおいに納得だ。

 日本全国に張り巡らされた国道。
「国の管轄下にあるからには、しっかり管理された道ばかりであるに違いない」
という固定観念、思い込み、妄想(?)は、木っ端みじんに打ち砕かれた。奇妙な国道が次々に紹介され、国道の概念を覆していく。
 車が走れないなんてのは当たり前。階段やエレベーターの国道もあれば、落石が放置されている国道もある。中には
「通るな、危険」
と警告されている国道まであるらしい。なんてこった。ちなみに、こういう酷い国道のことを、マニアは「酷道」というそうだ。

 そういう奇妙な国道や酷道の紹介から始まり、国道の歴史やレコード(最長、最短、最も急な坂など)を解説し、国道標識のうんちくがそれに続く。国道とマニアの相性がこれほどよいとは…。日本には多数の国道マニアが生息しているというのも頷ける。

 本書を読んだ理由の一つが、著者の佐藤氏が化学出身のライターだからなのだが、本書と化学は何の関係もなかった。きっと佐藤氏が研究者だった頃は
「学会に行ってきます」
とか言って、周辺の国道を散策していたに違いない。うらやましいぞ(?)

 本書を読んで、私もマニア心が動かされた。まずは軽く、通った国道を写真に収めることから始めてみようか。旅行の楽しみが一つ増えた気がするが、家族には嫌がられそうだなあ…。




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