2015年4月29日水曜日

映画評『ゴールデンスランバー』

珍しく、原作を読むよりも先に映画を見た


 旧友に呼び出され、車の中で眠っていると、首相暗殺の犯人になってしまった男の逃亡劇。元カノや昔の仲間にかくまわれつつ逃亡する青柳雅春に、不思議な協力者が次々と現れる。いったい誰が、何の目的で青柳をスケープゴートに仕立て上げたのか。窮地に追い込まれた青柳は逃げ切れるのか。冤罪事件の謎と、追いつ追われつの大活劇のバランスが絶妙。

 伊坂幸太郎のベストセラー小説を映画化したもの。私は、原作を読んでから映画を見ることがほとんどなのだが、今回はまず映画から鑑賞した。本屋大賞など、さまざまな賞を勝ち取っている原作が面白いことはほぼ確定だが、果たして映画はどうなのか。
 結論を述べると、違和感なく楽しめた。逃亡劇のスリルと、謎解きのドキドキ感が、見事に表現されていた。細部には
「なぜ、この人がここで出てくるの?」
という背景が分からない場面も出てくるが、時間の制約のある映画では仕方ない面があるのだろう。上手く処理されていると思う。原作を読めば
「ははあ、なるほど、そういうことだったのね」
と、その背景が理解できるのだろう。記憶の新しいうちに読んでみたい。

 現在の邦画は、人気の小説を映画化したものがほとんどだが、どうしても端折らざるをえず、話が「閉じない」部分が出てきてしまう。邦画界の事情もあるのだろうが、原作に頼らない映画の復権を期待したい。




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