2014年10月28日火曜日

書評 森繁和『参謀』(講談社)

落合ドラゴンズの懐刀が、選手育成法、人の育て方の極意を語る。


 落合監督がチームを率いた8年間で、ドラゴンズは何と4回の優勝を飾っている(すごい!)。しかも、残りの4年間も全てAクラス。この超黄金時代をコーチとして支えたのが森氏である。投手コーチ、バッテリーコーチ、ヘッドコーチを歴任し、落合監督の懐刀として政権を支えた。
 その名コーチが選手の育て方、すなわち人の育て方を語ったのが本書である。

 とはいえ、そこには「目から鱗」の指導法が書かれているわけではない。森氏の指導の基本は
「自分で考えられる選手を育てる」
ことに尽きる。
「そんなん当たり前やん」
と思う事なかれ。私も現在子育て中なのだが「自分で考えられる」ように育てることがいかに難しいか実感している。ついつい、あれこれ指図してしまうのだ。子育て経験者には共通の悩みではないだろうか。
 しかし森氏はこれを徹底する。もちろん
「それができない選手は去っていくのみ」
というところが子育てとは違うのだが、それでもなかなかできるものではない。人を育てるにあたっての心構えを教えてもらった。

 その他にも、完全試合目前の山井投手交代の真相や、吉見、浅尾をはじめ、大野など、前評判がそれほど高くなかった選手が次々と台頭する理由、ドミニカの格安選手たちが活躍するわけ、アラ・イバのコンバートの目的など、常勝ドラゴンズの秘密が次々に開示される。プロ野球ファンには垂涎の一冊だ。

 興味深かったのは、落合監督と森氏は、ドラゴンズ以前には接点がほとんどなかったことだ。森氏は西武、ロッテ、日ハム、横浜のコーチを歴任したのだが、目を見張るような実績を上げてきた訳ではない。
 この両者を引き合わせたのは「球界の寝業師」と言われた根本氏だったそうだ。根本氏のもくろみ通り、森氏は落合監督の下で、名参謀としての評価を確立した。森氏が多くの投手を育てたように、落合監督が森氏の能力を存分に引き出したのだ。
 落合監督が森氏をどのように扱って能力を引き出したのかも、随所に書かれている。中間管理職であるコーチをどのように使えば組織が活性化するかがよく分かった。ボスにあたる社長・部長にもおおいに参考になるだろう。しかし私はそのような立場にないので、それを生かせないのが残念だ…。




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