2013年7月16日火曜日

書評 横溝正史『獄門島』(角川文庫)

 金田一シリーズの例に漏れず、オカルトチックな雰囲気のストーリー。複雑な婚姻・親子関係、妄執・嫉妬、気の触れた当主など、背筋がゾワゾワするような舞台が用意されている。
 そこへ乗り込んだ金田一が、ちょっとピントの外れた、剽軽(ひょうきん)なキャラクターを見せつつ事件を解き明かす。舞台設定はオカルトだが、謎解きは論理的だ。このギャップが、金田一シリーズの真骨頂である。最後は、さまざまな伏線が回収され、すべての謎が明らかになる。お見事。

 私にとって本書は、中学生の頃に『八つ墓村』ともう一冊(何かは忘れた)を読んで以来、三つ目の横溝作品。当時は親から
「怖いで~」
とビビらされていたのでホラー作品なのかと思っていたが、読んでみるとそれほど怖さは感じなかったため、拍子抜けした記憶がある。
 いまではもちろん分かるのだが、横溝作品の本質はホラーではない。オカルトかと思わせつつ、最後には動機やトリックがきちんと明らかになるところが、巨匠と評価されるゆえんであろう。
「東西ミステリーベスト100」第1位の評価に違わぬ名作だった。

 粗筋はこんな感じ。
 瀬戸内海に浮かぶ獄門島。その名の示すように、罪人の流刑地としての歴史を持つ島だ。金田一耕助が、戦友の遺言を託されて向かったその島には、よそ者を寄せ付けない雰囲気を持つ住民たちが暮らしていた。
 そこで起こった連続殺人事件。金田一の滞在中に、網元の三姉妹が奇妙な姿で殺害される。動機は網元どうしの争いなのか、それとも色恋沙汰か。金田一が明らかにする、悲劇の結末とは。



【送料無料】獄門島改版 [ 横溝正史 ]
【送料無料】獄門島改版 [ 横溝正史 ]
価格:580円(税込、送料込)(楽天ブックス)

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿

【読書メモ】東野圭吾『あなたが誰かを殺した』(講談社)

 加賀刑事シリーズ、最新第12作。娘が学校の図書館で借りてきてくれたので、文庫化前に読むことができた。  このところ、加賀の人生に絡んだ話が多かったが、シリーズの原点回帰。加賀は探偵役に徹して事件を推理する。いかにもミステリーなミステリー小説だ。  別荘地で起きた連続殺人事...