2012年9月1日土曜日

書評 沢木耕太郎『檀』(新潮文庫)

『火宅の人』を書いた檀一雄の妻である檀ヨソ子さんの視点から、奇妙な夫婦関係を描いた小説。沢木さんはノンフィクションライターとして著名だが、本書は小説というカテゴリーが適切なように思う。

 檀一雄はある女性と浮気をし、妻ヨソ子と二股をかけるのだが、隠すわけでもなく、二つの家を行ったり来たりする。しかも、浮気相手は妻もよく知る女性である。奇妙な三角関係だ。また、それを『火宅の人』という私小説に著してしまうところもトンデモハップンである。
 そういったもつれた様子を、妻の視点から書いたのが本書。檀一雄と結婚し、家庭を築き、浮気されるものの離婚はせず、奇妙な三角関係が作られ、そして崩壊していく過程が妻の一人称から語られる。夫に対する、一途ではあるが少しねじ曲がってもいるような愛が伝わってくる。

 本書に対する私の感想をひと言で述べるなら「理解不能」である。なぜこのようなオープンな三角関係が維持できるのかが分からない。現代日本では、ほとんど不可能なのではないか。古き良き昭和の時代、女性の経済的・精神的な自立が進んでいない時代だからこそ可能だったのかもしれない。それとも、私の頭が固いのだろうか?….
 ともかく、ヨソ子さんがそういう関係を甘受する精神構造が理解できないので
「(理解はできないが)そういう女性は少なからず(少ないけど?)いるんやろう」
ということにして読み進めたが、一人称である女性の気持ちが分からないものだから、なかなか入り込めなかった。

 そのわりに、引き込まれるようにして最後まで読んだのは、このハチャメチャな夫婦関係の行く末を知りたかったからか、沢木さんの筆力がそうさせたのか、それとも私も年を取って我慢強くなってきたからか…おそらく、そのすべてが正解なのだろう。
 男性側の視点で書かれた『火宅の人』を読めば
「おお、こういうことだったのね」
となるのかもしれないが、現時点ではあまり食指が動かないなあ。




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