2012年7月26日木曜日

書評 久米田康治『さよなら絶望先生』(講談社コミックス)

 こんなマンガだったとは知らなんだ。
 タイトルから、ちょっと重めの教師物を想像していたのだが、開けてビックリ玉手箱。本作は、中学校を舞台としたブラックユーモアマンガだった。社会や芸能界やスポーツ界やマンガ界をブラックに風刺しつつ、少年誌の基準スレスレのエロやグロをまじえたギャグマンガである。
 無理にたとえるなら「ハイスクール!奇面組」や「伝染(うつ)るんです」と似た雰囲気で、それらをさらにブラックにしたものとでも言えばよいのだろうか。

 画は(著者自ら自虐しているが)キャラの区別が難しいなど、一見うまくないように見えるが、一方で妙にエロっぽかったりする。不思議な画だ。
 しかし本作は、画よりも文字で魅せるマンガである。細かいコマに細かい文字で、ブラックな風刺が書かれている(著者本人は「羅列ネタ」と表現している)。これを読み尽くすのが本作の醍醐味だ。たとえばこんな感じ。

 世間に蔓延する「恩着せがましさ」を取り上げ、「恩着せ社会に絶望した!」として、次のようにネタを羅列する(第10巻より)。

・核廃棄してやるからさ
・アメリカのイラク解放政策
・マガジン、サンデーの特別価格
・オレの美技に酔いな、とか言う
・お医者様の態度(治してやってんだよ、みたいな)
(中略)
・お客さまにお分けしております、というイタリア車メーカー
・この羅列ネタも何か恩着せがましい気がする、ごめん

てな具合である。この例は(私にとっては)まだ分かりやすいほうで、羅列ネタの中には私には意味不明なものも多い。だが
「私には分からないネタがツボにはまる人もいるのかなあ」
など、分からないネタも含めて楽しむのが本書の正しい使用法ということにしておく。

 私が少年誌を買わなくなってから10年ほどになるが、こういうマンガが「少年マガジン」に連載され、人気になるとは、時代も変わったものだ。昨今の小中高生のオタク指向にハマったのだろうか(小中高生には分からないネタがほとんどだと思うんだけどなあ…)。それとも、マガジンの購読層の中心が20代や30代に(もしかすると40代に)シフトしているのか。
 満喫とまではいかなかったが、ツボにはまったネタもあったし、こういうマンガが好きな人がいるのも分かる。ただ、マガジンの連載というのが非常に意外だった。




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