2012年7月19日木曜日

書評 柳広司『ダブル・ジョーカー』(角川文庫)

 ジョーカーゲームに続く、スパイ短編集第二弾。本作でも、イケメン(想像)なスパイたちが、ウルトラクール(タバコではありません)に任務を遂行する様子が描かれる。
 しかし読み終わってみると、それぞれのスパイたちのイメージは私の脳内に残っていない。なぜだ。ビールを飲みながら読んでいるからか(そうかもしれない…)。いや、スパイは印象を残してはいけないからだ。気配を隠し、存在感を消すことこそがスパイの条件なのだ。

 前作同様、第二次大戦開戦直前が舞台。「魔王」結城が率いるD機関のスパイたちが、世界各地を舞台に暗躍する。しかし、敵の中枢に乗り込んだり、スパイ一人の活躍により敵の部隊が壊滅したり、そういう派手な話ではない。地味だが、だからこそ強靱な精神力を要求されるスパイ活動が描かれる。
 渋い。そして、カッチョイイ。

 実在のスパイたちが本当に本書に出てくるような活動をしているのか、私には知るよしもない。本書のスパイたちは、ミッションインポッシブルのように無理難題をスーパーマン的に解決していくのではなく、地味なスパイ活動を淡々と、しかし精緻に実行していく。これが本シリーズの醍醐味といってよいだろう。

 本書を読んだ後に
「スパイになりたい」
と思う人は、自分の能力にかなり自信のあるナルシストか、それとも縛られることに快感を覚えるM気質か。おそらくその両方の性質をもっている人だろう。




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